慢性腎不全の指標 eGFR(推算GFR) <障害年金の検査>

慢性腎不全の指標 eGFR(推算GFR)

平成27年6月1日に障害年金の認定基準が一部改正されました。

その中で、腎疾患による障害の検査データとして「eGFR」が追加されました。

慢性腎不全の診断においては、糸球体濾過量(GFR)を指標の1つとしています。

このGFRは医療の現場では(内因性)クレアチニンクリアランスを測定していました。

ですが、このクレアチニンクリアランスを検査するには24時間の間、蓄尿する必要があります。

蓄尿は面倒です。24時間の間すべての尿を遮光ボトルに保存しなくてはならないからです。クレアチニンクリアランスの算出には24日間の尿量のデータ必要なのです。

ですから、尿量が正しくないとクレアチニンクリアランスのデータの正確性に問題を生じます。

そんな、手間がかかる検査であることに加えて、クレアチニンクリアランス自体の診療報酬の保険点数がなくなってしまったため、最近では推算糸球体濾過量(eGFR)が使われるようになっています。

eGFRの求め方

eGFRは、血清クレアチニン、年齢、性別により計算で求めることが可能です。

計算式は以下の通りです。

男性: 194 × (血清クレアチニン)^-1.094 × (年齢)^-0.287
女性: eGFR(男性) × 0.739

※血清クレアチニン:mg/dL、年齢:歳
※「^」はべき乗です。Excelなどで求めてください。

この式を使うにあたって注意点があります。

それは、この式は18歳以上にのみ用いると言うことです。

18歳未満の方が上記式で計算してもGFRとeGFRの値が解離してしまうので使用できません。

eGFR・血清クレアチニンに影響を与える要因

eGFRは血清クレアチニン値と年齢、性別から算出されるため、例えば長期間ベットに寝ていたことや四肢の切断等により筋肉量が減少してしまった場合には血清クレアチニンが低値となり、結果としてeGFRが過大に評価されます。

逆に運動や薬剤の影響などで血清クレアチニンが高くなる場合は、eGFRが過小に評価されます。

eGFRの名称

eGFRは「推算GFR」とも呼ばれています。

また、eGFRは血清クレアチニンから計算する方法の他に「シスタチンC」と言う検査データからも計算出来ます。

そのためこの2つを区別するために以下のように表記されていることもあります。

血清クレアチニンから計算:eGFRcreat
シスタチンCから計算:eGFRcys

また「EGFR」と言う名称の検査(非小細胞肺がんの治療薬の効果を調べる検査)もあります。間違わないようにしたいところです。

ちなみにeGFRは「イー」の後、一度区切るように読む。「イー、ジーエフアール」と言う感じです。EGFRは切らずに読む。「イージーエフアール」です。

■障害年金の認定基準

「eGFRの結果が記載されていれば、血清クレアチニンの異常に替えて、eGFRが10以上20未満のときは軽度異常、10未満のときは中等度異常と取り扱うことも可能とする。」

との記載がされています(平成28年6月1日改正版)。

ちなみに、診断書にeGFRの記載がない場合に、血清クレアチニン等から自分で計算して病歴・就労状況等申立書などに記載した場合も、このデータ を認定時に採用して欲しいと今回の改正時のパブリックコメントに意見させて頂きました。

ですが、「検査データは医師が記載したものでなくてはダメ」とのことでした。単なる算数なの ですが・・(笑)。

ところで、慢性腎不全の認定基準としてあげられている検査は、内因性クレアチニンクリアランス血清クレアチニンeGFRです。

ところが、内因性クレアチニンクリアランス値はGFRより約30%高値となると言われており、以下の変換式が示されています。

GFR=(内因性クレアチニンクリアランス値)*0.715

また、eGFRは血清クレアチニンから計算したものです。

GFRとeGFRは当然相関があります。

となると、この3つの検査データは全て相関があるのです。

クレアチニンクリアランスもeGFRもクレアチニンのデータを用いて計算しているので、当然と言えば当然です。

ですから3項目基準があっても、腎機能を3つの側面から見ているだけに過ぎません。

慢性腎不全であれば一般論として3つのデータとも異常域にある訳であり、1つの検査だけ高度異常で 、他の2つは軽度異常にも該当せず正常値であったと言うことは通常考えられないのです。

【参考】
CKD診療ガイド2012(日本腎臓学会)
糖尿病性腎症病期分類の改訂について(日本糖尿病学会)
維持血液透析ガイドライン:血液透析導入(日本透析医学会)

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